中古バイクの高騰と旧車ブームについてぐだぐだ

2002年のミスターバイクより

「10代の頃に憧れていたZ400FXに乗るという夢を50代で叶えることができました。一生の相棒にします!」

「80年代の当時、CBX400Fに乗りたかったけど、先輩が怖くて乗れなかった。今その夢が叶えられました!」

旧車系オートバイ雑誌に掲載されている中古車屋の広告なんかでよく見る言葉たち。

結構じゃないですか。

でもすみません、それは多分嘘なんです。

書いてあることではなくて、その内容がです。

そんなに憧れて乗りたかったのなら、

本当にその熱を冷まさずに抱えていたのなら(こんなに旧車というものが馬鹿げた金額になる前の)

もっと早くに買っているはずですきっと。

「その時は結婚したてで」「仕事で上京したばかりで」

まあ理由はあると思います。

けれど、人生という限られた時間から考えれば、50代からの付き合いになる"一生の相棒"とあと何年過ごすつもりなのでしょう。

その「乗りたかった時」あるいは20〜30代の時に買えば、経年劣化の少ない車体でもっと思い入れの深い相棒になっていたのではないかと、僕なら思う。

だから素直に

「旧車ブームで流行ってるみたいなので、その波に乗って買いました!」

こう言ってしまえば良い。

ではなぜ、旧車を買う時にこんな謎の言い訳をするのか。

それは自分を催眠にかけているだけ。

存在すらも怪しい記憶を捏造しているだけ。

そうでもしないと買えない金額になってしまったから。

「前からずっと憧れていたから買った(ことにしたい)」

そのあたりの心理は痛いほどよく分かる。

けれど、その背景にはマーケティングの匂いしかしない。

本当は何も知らない。

だから「絶版車専門店」だなんて怪しい店で買える。

「(なんかよくわからないけど)ちゃんと整備していそう」

「みんなが買っているから(自分も)安心」だなんて思ってしまう。

歳をとる、少し金を持つようになる。

すると人の考えはどんどん碌でもない方向に転がっていく。

ただ金を持っているだけの「バイク芸人・芸能人」が、

胡散臭い"絶版車専門店"の広告に成り下がった旧車系の専門誌が、

その気持ちを煽り続け、市場が出来上がっている。

だから、本当は好きでも何でもない「バイク」なんかに興味を持っているような錯覚を起こす。

この前見た動画なんて酷かった。

旧車屋がやっているYouTubeのチャンネル。

カワサキW3の中古車を紹介している内容なのだが、「非常に乗り易くて、これならはじめての大型バイクに最適だ」なんてコメントされていた。

大型免許を取得してW3なんか買ったら後悔しかしないだろう。

まあ飾って眺める目的だったら構わないだろうけれど、製造時からの不良品を初心者に推薦するなんてどうかしている。

いや違う逆か、オートバイをわかってる人なら買わないんだ。

だからよく分かってない相手に売ろうとしてるんだろう。

コメントをしている人物も無責任というものだ。

こんな曲がらなくて止まらないマシンを勧めているのだから、初心者が事故を起こしたらどうする?

このコメンテーター、伊豆スカイラインで無事故キャンペーンを頑張っていた頃は素直に素敵だと思っていたからなお残念だ。


いわゆる「旧車ブーム」は単なる商売でしかない。

モノがない、あるいはあるけど手に入りづらいものは売り手によって価格を自由に決めやすい。

趣味性が高く、自由と結びつけられやすいオートバイが、こんな不自由なモノの餌食になっているのは少し悲しい。

マトモな工具も持たない持ち主が「趣味はバイクです!」と言う。

そして、週末になれば道の駅とライコランドにしか連れて行かれない旧車たち。

なんだか寂しい気持ちになる。

それは、こんなことを書きながら自分も人のことをとやかく言えるほど旧車と付き合えていないからだと思う。

ただひとことあるとすれば、古い工業製品に対して、その価格に見合うような(過度な)期待はしないこと。

旧車はみんな老体だ。

そんな爺様たちに「300万円分の満足感をくれ」なんて、決して考えない方がいい。

そして、「欲しいと思って過ごした」20年だか30年という取り返せない時間の方が、よほど価値のあるものだと、僕は思ってしまう。

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