ブーツを磨いた日
ブーツの手入れをした。
メンテナンスなんていう高尚なもんじゃない。せいぜい、シューケアといったレベルだろうか。
両方ともレッドウイングのもの。ワークブーツは7〜8年履いているけれど、週末、それも四つ輪を運転する予定がない日にしか出番がないから傷みが少ない。
エンジニアブーツの方が少し先輩で、僕のところに来て10年くらいになる。
当時はヤマハのSR400に乗っていて、その時の僕にとって、PT91は決して安くない金額だったことを記憶している。
ダブワンに乗るようになってからは、右のくるぶしあたりが傷だらけになる。
理由はマシンの構造にあって、シフトリンクのロッドとその関節部が当たり、変速の度に削れるからだ。
購入時はかなりきつかったこのエンジニアブーツも、今では僕の足の形になっている。
ブラシで埃を払いながら、数々のツーリングを思い出す。
物に対してそれほど執着するタイプではない。
いつだったか、遠乗りした時に訪れた海。
防波堤の上で胡座をかいて、脱いだブーツを揃えて脇に置き、丸めた靴下を放り込む。
自動販売機で買っておいたジュースを飲みながら眺めたブーツが、行儀良く肩を並べている。
その時は、なんだかこのブーツがとても頼もしく思えた。
質実剛健というのだろうか。その生い立ちは分かりやすく、嘘のない存在に感じられる。
SDGsだか分からないけれど、どこかのサラリーマンが背広の胸に着けている虹模様のバッヂなんかとは、対極に位置するアイテムのような気がする。
次にこのブーツたちを履いて遠乗りできるのは、いつになるだろうか。