カワサキW1のあゆみ

カワサキW1の歴史・歴代モデル

バナーのクリックで各車の詳細を見ることができます。

1965年:カワサキX650(試作車)


1966年:カワサキW1


1971年:カワサキW1SA


1973年:カワサキW3(650RS)

カワサキW1の生い立ちはメグロでありBSA

今なお多くのファンから愛されるW1は、メグロが生みの親とも言えるし、英国のBSA(バーミンガム・スモール・アームズ)がそうとも言える。

ルーツを辿れば、バレンタイン・ペイジというエンジニアに行き当たる。

彼はイギリスの内燃機製造会社であるJAP(ジョン・アルフレッド・プレストウィック)でエンジン設計の技術を体得し、その後はアリエルやトライアンフ、そしてBSAなどで開発に携わったとされている。

今でこそ古めかしいメカニズムと思われるOHV(オーバー・ヘッド・バルブ)の機構であるが、1900年代初頭におけるオートバイのエンジンはサイドバルブが主流であった。

バレンタイン・ペイジはBSAに移り、OHV2気筒500CCのエンジンを開発する。しかし、第二次大戦の突入によってそのエンジンが日の目を見るのは大戦後の1946年。A7(シューティングスター)であった。

メグロあるいは川崎重工のエンジニアたちの証言・文献に触れると、エンジン設計についてBSAを参考にしたがコピーではないといったコメントが見受けられる(事実、オリジナリティを持って新たに設計されている部分が多い)が、バレンタイン・ペイジの設計が元祖というのは間違いがないだろう。

このA7を範にして、カワサキメグロ製作所の林政康氏がエンジン、糠谷省三氏がフレームを設計することになりメグロスタミナK型が誕生。その後のW1シリーズへと続いていくのである。

今より約90年も前に造られたエンジンの思想が、今日も「ダブワンサウンド」として鳴り響き、なおモーターサイクリストやエンスージヤストたちの心を掴んでいるのだ。

メグロK1〜カワサキW1シリーズ各モデルの生産台数一覧表

K型:目黒製作所、カワサキメグロ製作所調べ。K2型〜W3:カワサキオートバイ販売調べ。

K1K1PK2K2PW1W1PW1SW1SPW1SSW2SSW2PW2TTW1SAW1SAPW3K2〜W3
合計
K1〜W3
合計
1960年683098
1961年6964171113
1962年731170901
1963年256*1不明256*3
1964年500*2500*3
1965年44630055801801
1966年031124222227552755
1967年79719216020112111225832583
1968年81121929507294862435003500
1969年2759274411530893089
1970年2065366338743874
1971年446312145844584
1972年174486110328332833
1973年172817281728
1974年159915991599
合計1751*31117*344661132823264848480251199660639987020743302734630214
山海堂「W1File」より

車名にPがついているものは警察に納入された(白バイ)のモデル。
*1:〜6月末。1963年7月以降の生産台数は不明
*2:東京オリンピック納車台数概算
*3:概数

国内におけるW1系エンジン・フレームのルーツは目黒製作所が生産していたメグロスタミナK1だ。

1960年の第7回東京自動車ショウで発表されている。

1960年、当時の価格にして29万5,000円。同年の平均初任給が1万3,000円だったことを考えると非常に高価な乗り物であったことがわかる。

上の表を見てもわかる通り、生産台数も多くはない。一般の庶民には高嶺の花であり、主に白バイなど警察やオリンピックで活躍していることが見て取れる。また、メグロK1およびK2について、正確な生産台数は詳細に把握されていないものと思われる。

生産台数ではW1SAが9,870台と圧倒的に多く、次いでW1Sが4848台。W3は4,300台程度であることから、現存する個体もW1SAが一番多いことも頷ける。

また、こうして見るとメグロとWは、我が国の高度経済成長とともにあゆみを進めたような恰好である。

「国民車構想」としてブルーバードやパブリカが発売された1960年、K1のメカニズムはOHV2気筒、シングルキャブにドライサンプetc...であったことに対し、W3が終売する1974年にはすでにDOHCの4気筒、言わずと知れたスーパーマシンともいえるZ1が世界を席巻している。

「BSAのコピーである」と揶揄されてから、「世界一」を獲得するまでの期間と、その約15年間がいかに密度の高いものであるかを知ることができるだろう。