スーパーカブの自賠責保険を更新した
週末、父の形見でもあるスーパーカブ110(JA07型)の自賠責保険を更新した。
今は便利になっていて、スマホから手続きを行えばあとはコンビニで支払いと証書の印刷のみを行うだけで完結する。
ずっと前にあんどんカブの自賠責保険へ加入した際はもう少し面倒くさかった記憶がある。
2024年6月20日から5年間の加入。次は2029年というわけだ。
当たり前の話だが加入期間が長くなるほど一年あたりの保険料は格段に安くなる。
手放すタイミングが決まっていない限りは5年間で加入することが一番だろう。
加入の手続きを行うにあたって、車体番号(型式名)などが記された役所発行の登録証と、これまで加入していた自賠責保険の証書を棚から取り出す。
前回の加入は2019年の6月。
そんなに前のことのように思えないが5年の歳月が経っている。
その時、スーパーカブを所有していたのは父であり、保険に加入しているのも父の氏名。
2019年6月。当時はまだ世界的な感染症の騒ぎも起こっていないし、父も生きていた。
ガンを宣告される前で、家業の喫茶店も存在していた。
このスーパーカブは、父が2009年に購入してから通勤・買い出しと、仕事用のマシンとして来る日も来る日も走っていた。
あの頃、父とコーヒーを飲みながらオートバイについて語り合い、次のツーリングの計画を立てながら過ごしていた。
「なんとなく続いていた変わらない日々」の末期だったと、今なら思う。
保険の証書を眺めながら、父は当たり前のように次の5年も、こうしてこの生活が繰り返されると考えていたはずだ。
それは僕も同じで、次の5年のことを想像出来ないながらも、当たり前のものとして過ごそうとしている。
もしあの頃、2019年の6月に1時間だけでも戻れるとして、実家の喫茶店でアイスコーヒーを飲みながら父と話ができるなら、どれだけ嬉しいことか。
スーパーカブに乗っていると、時々父のことを思い出す。
特に実家の周辺を走っている時は、父の見ていた景色、感じていたことに触れたような気がする。
5年後、僕は40になり、倅は小学生になっているだろう。
「ちょっと買い出しに行って来るわ」と言ってヘルメットを被り、店の前に止めたスーパーカブに跨る父が、僕にとっての働く男の像であり、父の姿。
僕も次の5年を、そんなふうにして過ごそうと思う。